東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)122号 判決
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【事実】(前略)
第二 請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続
原告は、昭和三一年一二月一四日出願、昭和三四年三月一九日登録にかかる名称「軟質塩化ビニールパイプの包装」なる実用新案登録第四九〇、七二四号実用新案権の権利者であるが、被告東拓工業株式会社は昭和三六年五月九日、原告を被請求人として右実用新案の登録無効審判を請求し(同年審判第二六九号事件)、被告株式会社オーエー(旧商号株式会社オーエー商会)は同年七月一日、同様の審判を請求し(同年審判第三六三号事件)たところ、特許庁は、両事件を併合審理のうえ、昭和三七年六月二一日、前記実用新案登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は、同年七月五日、原告に送達された。
二 本件実用新案の要旨
別紙図面<省略>に示すように、(イ)軟質塩化ビニールパイプaの中に空気を圧入し、これを外部に逃さないように、始端bと終端cとの各管孔を盲端一体に熔着せしめ(ロ)これを端面板を有する枠dに捲収して成る軟質塩化ビニールパイプの包装の構造。<以下省略>
【判決理由】(争いのない事実)
一 本件登録実用新案に関する特許庁における手続、本件登録実用新案の考案の要旨及び本件審決理由の要旨が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。
(取消事由の有無すなわち本件考案の新規性の有無について)
二 <前略><証拠―省略>を総合すれば、
(一) 被告株式会社オーエーは、当初手芸用の細いビニールパイプの製造販売をしていたが、昭和二九年頃から太いものが流行し始めたので、同被告会社においても、径一〇粍位までの太いパイプの製造販売を始め、この種のビニールパイプは、昭和三〇年夏頃から、ビニールホースとして、散水、給油等、家庭用、工業用に使用されるようになつたこと、
(二) 右被告会社においては、これらビニールパイプを、最初は、自動車のタイヤ状に輪き巻き、両端は切つたままの形で紐で括る程度の包装にしていたが、のち両端面にベニヤ板をつけたドラム巻きにしたところ、取引先の問屋から、このような包装状態では、巻き始めから一〇米位の部がつぶれて売りにくいと苦情が出たので、本件登録実用新案の考案と同じく、ビニールパイプに適当の圧加で空気を入れ、空気が逃げないよう両端を熔着し、ドラムに巻き取つてもつぶれないような包装方法を講じて販売したこと、
(三) 前記ビニールパイプへの空気の圧入は、四分の一馬力のコンプレツサーにより、また、両端の熔着は、当初は電気鏝を用い、のちには電気コンロを用いて、右被告会社の増築拡張前の深江工場において始めたもので、その時期は、昭和三一年六・七月頃か、少くとも右工場を増築拡張した同年の秋より以前であつたこと、
を認定しうべく、<中略>他に右認定を左右するに足る明確な証拠は全く存在しない。
しかして、前認定の事実によれば、本件登録実用新案にかかる包装方法は、その登録出願の日である昭和三一年一二月十四日(登録出願の日は、当事者間に争いがない。)以前に、被告株式会社オーエー(当時の商号株式会社オーエー商会)において公然実施していたものというべく、この点について、本件審決に原告主張のような事実誤認があるとは断じがたい。(三宅正雄、影山勇、荒木秀一)
(注) 本件と同じ実用新案権については、別に二件の無効審判事件が存在し、特許庁では、そのそれぞれについて無効の審決があつたので、東京高裁にその審決取消訴訟が係属していたが(昭和三七年(行ナ)第一二〇号、第一二一号)、その方では無効審判請求人である被告らのほうで、一旦した主張をすべて撤回したので、右両件とも審決が本件実用新案の登録を無効とすべきものとした、その理由に掲げる事実について、これを肯認するに足りる証拠は存在しない、として、各審決が取り消されている。(東京高裁、昭和四〇年九月二八日言渡)本件判決とは結論が異なることになつたが、弁論主義の適用として、やむをえないところであろう。